ONScripter は、高橋直樹氏が開発された NScripter で作成されたノベルゲームをあらゆるプラットフォームで実行するプログラムで、Windows CE にも移植されています。100% の互換性ではないので、一部動作しなかったり、起動はするが特定のシーンでクラッシュするタイトルがあります。
| Brain の世代 | 対応状況 |
|---|---|
| 第1世代 | 使用可能(重い) |
| 第2世代 | 使用可能 |
| 第3世代 | 使用可能 |
| 第4世代 | 使用可能 |
導入[]
第2世代以前は HVGA 版、第3世代以降では VGA 版をダウンロードします。4:3 画面のゲームは wide でない方、16:9 画面のゲームは wide がつく方を使います(大抵のゲームは 4:3 です)。入手したら、展開して得られる onscripter.exe を NScripter 製ゲームのフォルダにコピーします。また、ゲームフォルダ内に default.ttf が存在しない場合は、任意の TTF フォントをこの名前に改名してコピーします。これで丸ごと Brain に転送し、本来の PC 用 exe ファイルではなく onscripter.exe を実行することで、ゲームが起動します。第3世代以降では空ファイルの AppMain.cfg を置くか辞書アプリ外で起動するなどの方法で、高解像度モードで実行してください。作品によってはかなりメモリを使用するので、辞書アプリや ceOpener などの高負荷なソフトは終了させておくことを推奨します(~ must shut down のような内容のポップアップで落ちる原因はメモリ不足です)。
フォントについては、第3世代以降機種の NAND にある日本語フォントをコピーして使用してもいいですし、丸文字系のみかちゃんフォント(ダウンロード)、手書き系のあずきフォント、ゴシック体の kazesawa フォントなども使用できます。
なお、セーブデータは新形式のみの対応となり、古いバージョンの NScripter/ONScripter で作成したものは正しく読み込めません(新形式に変換する方法もないようです)。特に、古い作品に付属する exe ファイルをそのまま Windows PC で遊んでいたセーブデータは、読み込めない可能性が高いです。
ONScripter の各バージョンの画面サイズは以下の通りです。
- VGA-wide: 800x450
- VGA: 640x480
- HVGA-wide: 480x270
- HVGA: 424x318
操作方法[]
タッチ操作でほとんどのことができますが、一部ボタンにも操作が割り当てられています。カーソルキーと決定キーはそのままの動作です。戻るキーを押すとメニューが表示され、セーブ・ロードもここから行います。F キーを押すとフルスクリーンモードになります。ウィンドウ右上のバツ印の横の四角マークではフルスクリーンモードになりません。また、フルスクリーンモードでは ceOpener でスクリーンショットを撮れません。
サイズ変更[]
一般に PC ゲームは Brain よりも想定解像度が高いため、そのまま動かすとはみ出してしまいます[1]。第3世代以降で VGA (640x480) / WVGA (800×480) 解像度のゲームを VGA / VGA wide 版 ONScripter で実行する場合はそのままで OK ですが、それ以外はサイズ変更が必要です。いくつか著名作品の例を説明します(最後まで動作確認したわけではないので、途中で落ちる等の可能性はあります)。
Bye[]
この作品が基本形になります。本記事で紹介する以外の NScripter 作品については、まずはこの作品の方法を参考に作業するのがおすすめです。
まず、ゲームで使用される画像ファイルなどが入った arc.nsa をこちらで配布されている NSAOut で展開します。nsaout.exe をゲームフォルダにコピーし、それをダブルクリックで実行すると展開が始まります。延々とコマンド画面で文字が流れてゆき、処理が終わると画面が閉じます。生成された arc フォルダ内の構造を変更してはいけません。
Ralpha の設定内容
次に、画像ファイルをリサイズします。これにはファイル形式の忠実な維持と比率指定による一括リサイズができるソフトが必要で、Bye のように GIF 画像を含まない作品では Ralpha がおすすめです(GIF 画像を含む場合は後述の ImageMagick を使います)[2]。上部の「大きさ」で「比率」が選択されている状態で、「倍率」に「電子辞書における ONScripter の画面サイズ÷ゲーム本来の画面サイズ」を設定します。例えば Bye を VGA 版 ONScripter で遊ぶ場合、ONScripter は 640x480 でゲーム本来の画面サイズは 800x600 なので、480÷600 = 0.8 = 80% であり、80 と設定します。同様に、HVGA 版 ONScripter (424x318) で遊ぶ場合は 318÷600 = 0.53 = 53% なので、53 と設定します。設定できたら、「ファイル名生成規則」を <base>\resized-<dir><old>(コピペできないので間違えないように手打ちしましょう)とし、「即時変換」にチェックを入れ、右の「Exif 自動回転」のチェックを外せば設定完了です。先ほど展開した arc フォルダをウィンドウに放り込むと即座に変換処理が始まります。完了すると arc フォルダの横に全く同じ構造の resized-arc フォルダができているはずです。
最後に、nsaed2 で arc.nsa に戻します。nsaed.exe に対して resized-arc フォルダをドラッグ&ドロップ(ダブルクリックではありません)すると新たな arc.nsa が生成されるので、これをゲームフォルダに上書きコピーします。
なお、この作業は NScripter 公式サイトで入手できる、NScripter 最終版の中にある NScripter最終版\ツール\NS2Arc.exe や、NScripter ドキュメントの中にある nscr\ツール\nsaarc.exe を使っても構いません。後者は arc.nsa を生成し、前者はより新しい形式の 00.ns2 を生成します。こちらの公式ツールは、紛らわしいですがドラッグ&ドロップではなく逆にダブルクリックで実行し、出てくるフォルダ選択ダイアログで resized-arc フォルダを選択し、その次に出力先を指定します。ただし、公式ツールは日本語を含むファイル名に非対応なので、該当のファイルをアーカイブに含む作品には nsaed2 を使います(Bye はどれを使っても問題ありません)。
これで全ての作業が完了しました。Bye の実行に最低限必要なファイルは以下の通りです。
MU(フォルダ)arc.nsaまたは00.ns2default.ttfnscript.dat(またはそれを復号した0.txt)onscripter.exe(またはそれを改名したAppMain.exe)
ひぐらしのなく頃に[]
無料お試し読み版を前提に説明します。かつて配布されていた鬼隠し編のみの旧版は VGA 解像度なので、VGA 版 ONScripter で動かす場合は変換不要(HVGA 版 ONScripter では Bye と同様の手順で全画像を 66% に縮小)で動きます。一方、現在配布されている綿流し編まで遊べる新版は、立ち絵とカーソルのみ高解像度化されているため少し複雑な作業が必要で、それについて説明します。
NSAOut で展開する手順は Bye と同じです。nsa ファイルが 2 つありますが、自動で両方とも展開されます。そして、展開された中身のうち、bmp2\cursor0.png と bmp2\cursor1.png、そして bmp\tati 以下にある bmp_ と付かない 7 つのフォルダを 50% で縮小します(ここは全機種共通)[3]。VGA 版 ONScripter で動かす場合は、このまま Bye と同様にアーカイブ化すれば OK です。HVGA 版 ONScripter で動かす場合は、先ほど縮小したデータを含む arc フォルダ全体をさらに 66% で縮小し、これをアーカイブ化します。
「ひぐらしのなく頃に お試し読み版」(現行版)の実行に最低限必要なファイルは以下の通りです。元データにはたくさんのファイルがありますが、そのほとんどは PC 専用のファイルなので Brain では使われません。
WAV(フォルダ)arc.nsaまたは00.ns2default.ttfonscripter.exe(またはそれを改名したAppMain.exe)pscript.dat(またはそれを復号した0.txt)
BGM 再生処理が不安定なので、WAV フォルダの中にある LP フォルダを削除するか改名するかで読み込めないようにすると、BGM が鳴らなくなる代わりに動作が安定します。
うみねこのなく頃に[]
こちらも無料お試し読み版を前提に説明しますが、こちらは旧版も現行版も VGA 解像度で制作されているため、VGA 版 ONScripter でプレイする場合はそのままで動作し、HVGA 版 ONScripter でプレイする場合も Bye と同様の手順でアーカイブ内の全ファイルを 66% で縮小して再アーカイブ化すれば動作します。ただし、こちらも同様に BGM 再生処理が不安定なので、安定しない場合は BGM フォルダを削除または改名してください。
「うみねこのなく頃に お試し読み版」(現行版)の実行に最低限必要なファイルは以下の通りです。こちらも同様、元データにはたくさんのファイルがありますが、そのほとんどは PC 専用のファイルなので Brain では使われません。
BGM(BGM が入ったフォルダ、不安定な場合は削除してもよい)ME(フォルダ)SE(フォルダ)sys_se(フォルダ)arc.nsaまたは00.ns2default.ttfonscripter.exe(またはそれを改名したAppMain.exe)pscript.dat(またはそれを復号した0.txt)
補足:ImageMagick を使う場合[]
ImageMagick はコマンドラインの画像処理ツールで、OSS で開発されています。この世のすべての画像処理に対応すると言っても過言ではないほど機能が充実していますが、コマンドラインツールなので少々使い方が特殊です。
インストール手順は、ダウンロードページから入手してもいいですし、winget から入手しても構いません。色々バージョンがありますが Q16-HDRI 版で問題ありません。ダウンロードページなら Q16-HDRI-x64-dll.exe で終わる名前のファイルを実行してインストールし、winget なら winget install ImageMagick.Q16-HDRI です。dll 版と static 版はどちらでも良いはずです。WSL にインストールする場合は単純に sudo apt install imagemagick のように OS のパッケージマネージャの方法に従うだけです。コマンド画面から mogrify コマンドが使えるようになれば成功です。
使い方は、arc フォルダがある場所で PowerShell や WSL を開き、Windows に ImageMagick を直接インストールした場合は PowerShell に Get-ChildItem -Path "arc" -Recurse -File | ForEach-Object { mogrify -resize 50% $_.FullName } と入力し、WSL にインストールした場合は Bash に find arc -type f -print0 | xargs -P$(nproc) -0 -I{} sh -c 'mogrify -resize 50% {} || true' と入力すれば一括変換できます(arc フォルダ内を直接変換します)。共に、arc を実際のパスに、50% を所望の縮小サイズに置き換えてください。コマンド処理は強力ですが、些細なミスや勘違いで全く異なる破壊的な動作になることもあるので、十分注意して実行してください。
ImageMagick を使うと BMP 画像のビット深度が統一されてしまいますが、ONScripter での読み込みにあたり支障はありません。